[ 連載 ]

正しい新聞の読み方

第11回 「記事の信頼性」を判断する最も簡単な方法

2016年3月10日

20160201_新聞の正しい読み方_7

 誤字脱字に注目する

 メディアリテラシーでとくに重要なのが「情報の信頼性を見極める力」です。しかし、報道に携わった経験でもない限り、メディア情報の信頼性を判断するのは至難の技です。

  では、どうすれば一般の人でも情報の質を見分けることができるのでしょう。

  最も簡単で有効性が高いのが、実は、「誤字脱字」に注目する方法です。私は、自分の経験から、誤字脱字が多い記事は「情報としての質が低い可能性が高い」と判断してもいいと考えています。Twitterでシェア

 この方法は、新聞記事はもちろん、ブログなどネット情報にも当てはまるので、ぜひ覚えておいてください。

  あまりにも単純で、拍子抜けしたかもしれません。しかし、「記事が作られる過程」を考えると、これが重要である理由が理解できると思います。

  新聞にしろブログにしろ、執筆や推敲の段階で誤字脱字に気付けば、必ず修正するでしょう。大した手間ではないのですから、あえて放置するということは考えにくいわけです。

  にもかかわらず、そのまま掲載されたということは、原稿の段階で筆者も含め、だれもミスに気づかなかったということを意味します。つまり、筆者がきちんと読み返していない上に、「複数の人の精査をくぐっていない」という可能性が高いのです。Twitterでシェア

  「情報の質」を考える上で、こうした「記事ができるまでの工程」は決定的に重要な意味を持ちます。

  記事の正確性は一義的には書いた本人の能力や注意力などに左右されます。ただ、原稿が完成してメディアに掲載されるまでの工程に着目すると、

 【チェックした人の数】✖【チェック参加者の能力】✖【チェックの回数】

  で決まると言ってもいいでしょう。このとき、誤字脱字があるということは、3つの項目のいずれかのレベルが低い可能性を示唆しているのです。

  ヤフーニュースのトップページに掲載されるような記事でも、ブログの場合は新聞記事の転載に比べ、かなりの確率で誤字脱字があります。これは筆者が書いたものをそのまま載せていたり、編集者がいてもほとんどチェックしていなかったりするからだと考えられます。

  中には一つの記事に2〜3個も誤字脱字があって、本人すら読み返していないと思われるものもあります。そういう記事は、内容を検証していくと明らかな事実誤認や、根拠が不確かな記述が見つかるケースが少なくありません。

新聞の「誤字」と情報の質

  一方、新聞で誤字脱字を見かけることは、かなり少ないでしょう。

 これは、早版から最終版まで通して掲載される記事の場合、版が変わるたびに事実関係や誤字脱字のチェックを受け、修正されていくからです。

  原稿を書いた記者は、新しい版が刷り上がるたびに、文面を変えていなくても1行1行、赤鉛筆で文章をなぞりながら、誤字脱字や、変えた方がいい表現がないかをチェックします。

 出てくる人名は、取材時にもらった名刺や、データベースに出てくる過去記事と照らし合わせて毎回見直します。

  もちろん、担当デスクも同じように、誤字脱字はもちろん、記述に根拠があやふやな点がないか、事実関係は正しいかなどをチェックし、疑問が生じたときは自分で確かめたり、記者に問いただしたりします。同時に、校閲記者も誤字脱字や事実関係の間違いを探します。

  ここからおわかりのように、早版と最終版ではチェックの回数が全く異なります。自分の経験から言っても最終版までの過程で誤字脱字と事実の間違いはかなり減ります。要するに「情報の質」ということで言えば、遅い版になるほど高いわけです。

  もし、購読している新聞で、一週間に何度も誤字脱字を目にしているとすれば、新聞の1面に書かれている「版」を確認してみてください。おそらく朝刊であれば、最終版である14版(産経新聞は15版)ではなく、11〜12版なのではないでしょうか。こうした早版は、最終版に比べてチェックが甘いのです。

  もっとも、「最終版の1面」に限ると、早版とは違う理由で誤字脱字が生じやすい事情があります。特ダネが入ってくることがあるからです。

  特ダネは基本的に最終版にだけ入れます。前々から原稿が出来上がっているケースがないわけではありませんが、大半は夜、遅い時間にウラが取れて掲載が決まります。

 その場合、原稿を書く時間は短く、編集や修正の時間もあまりありません。ゲラも1回しか出ないので、チェックも一発勝負です。ですから、特ダネが入っている最終版の一面には、結構な確率で誤字脱字があるのです。

  こうした観点からすれば、ある新聞で誤字脱字が目に見えて増えてきたら、経営状態が悪化している可能性を疑ったほうがいいかもしれません。Twitterでシェア特ダネを生むことのない校閲部門は、業績が悪くなると人員削減の対象にされやすいからです。

  例えば、行きすぎた「合理化」の結果、チェックする人の数が減ってミスを見つけにくくなっているのかもしれません。本来なら版を作り直してでも修正すべき間違いに気づいていながら、コストをケチってそのまま載せている可能性もあります。

  こうなると、報道自体の信頼性にも疑いが湧いてきます。

 人員削減が記者やデスクにまで及び、個々人に割り振られた仕事量が限界を超えると、ミスが目立って増えるものです。誤字脱字の増加は、記者たちが以前より時間に追われていることを示しているのかもしれません。

 こうした新聞社では、十分にウラを取らずに書いた記事が出てくる可能性が高いといえます。ニュースの分析も、たくさんの専門家に取材した上で書いたものではなく、記者の印象論だけを書いているのかもしれません。

  「記事の質」の違いや変化は、毎日のように複数紙の記事を読み比べ、実際に自分で検証している記者には見えていますが、一般の読者はそこまで時間をかけることはできないでしょう。しかし、誰でも検証が可能な誤字脱字を目安にすると、記事や媒体の「情報の質」を類推することができるのです。

 *******************************************************************

ところで、この連載に大幅加筆した『新聞の正しい読み方〜情報のプロはこう読んでいる!』が3月10日に発売されます。

 ここまで書いてきた紙の新聞を読むための基礎知識に加え、「情報を立体的に読むノウハウ」や「情報リテラシーを高める方法」なども盛り込みました。新聞の購読者はもちろん、就活生や新社会人、ビジネスパーソンにも役立つ内容にしたつもりです。ぜひ一度、本屋さんで手に取ってみてください。