[ 連載 ]

正しい新聞の読み方

第7回 月曜日の朝刊には特ダネは載らない?

2015年2月9日

 20160201_新聞の正しい読み方_7

 記事を読む際にはニュースソースや取材方法による違いに注目することも重要です。今回は、こうした点に注目して記事を分類してみましょう。

 ニュースソースや取材手法などによる分類

――特ダネ(スクープ、特報)、独自モノ、調査報道、共通モノ、発表モノ、傾向モノ

 

 特ダネ(スクープ、特報)については、日常用語になっているので詳しく説明する必要はないかもしれません。

 あえて定義すれば、その新聞社による単独の取材に基づいており、その日の段階では他紙に出ていない記事であることが前提になります。こうした記事は「独自モノ」「独自ダネ」と呼ばれます。「特ダネ」とは、「独自モノ」の中でも、とくに社会への影響が大きいものだといえるでしょう。

  特ダネは基本的にはページのトップか、カタ・サイドなど2番手の位置に掲載されることになります。超弩級の特ダネであれば1面トップ、黒地に白抜きのヨコ見出しで報じます。

  独自ダネの中でも、記者が警察や役所などの行政組織に頼らず、自ら発掘したニュースを報じることを「調査報道」と呼びます。

 例えば政治家の汚職について、警察や検察が捜査して逮捕が近いことを記者が嗅ぎつけて報じた場合も「特ダネ」にはなります。ただ、このケースでは汚職を見つけたのは記者ではなく、あくまでも捜査当局です。これに対し、記者自身が独自の分析や取材によって汚職の事実を掴んで記事にするのが調査報道です。

  調査報道によるスクープは、ジャーナリズムの世界では最高の評価を受けます。再び汚職の例で言えば、捜査当局がすでに動いている場合は、放っておいても政治家は逮捕され、事実は明るみに出ます。しかし、調査報道で明らかになるケースでは、報じられなければそのまま汚職の事実は闇に葬られるかもしれないからです。

  独占インタビューも、「独自モノ」の一種です。インタビューの相手が大物で、滅多にマスコミに登場しないようなケースは「スクープ」に近い位置付けになります。

 もちろん、会話の中で重要かつ新しい話が出て来れば、そのまま特ダネになります。例えば有名企業の社長が新しい経営方針を示したり、政治家が政策の変更を表明したりすれば、それ自体がストレートニュースになります。その場合は、一問一答スタイルのインタビュー記事とは別に、雑報スタイルで報じることもあります。

  一方、単独取材ではなく複数社が同時に報じるニュースは、「独自モノ」に対して「共通モノ」「共通ダネ」と呼ばれます。オリジナリティが低い分、記事としての価値や評価は低くなります。

 なかでも企業や役所などがプレスリリースや記者会見を通じて公表するものを「発表モノ」と言います。新聞はこうした発表モノばかり載せているではないかという、「発表ジャーナリズム」批判がありますが、記者の世界でもこうした記事ばかり書いていては評価されません。

  記者としては、「発表モノ」や「発生モノ」であっても、なんとか付加価値をつけたいところです。こうした場合に使うのが、幾つかの共通ネタを集めて一つの記事にする「傾向モノ」「まとめモノ」と呼ばれる手法です。Twitterでシェア

  例えば、食品メーカーが2〜3社、値上げを発表したとします。それぞれはせいぜいベタか段モノのニュースですし、書いても「発表処理」でしかないので社内でも評価されません。そこで、「最近、食品の値上げが相次いでいる」という「まとめモノ」に仕立てるわけです。買い物に行けなかった日に、冷蔵庫にある、ありあわせの材料で料理を作るのに似ているかもしれません。

  意外性があって面白いまとめモノは、世間で話題になって他紙も追わざるを得なくなります。こうした記事では、なぜそのような現象が起きるのかといった背景も解説するため独自性や付加価値が生じますし、バラバラのニュースの共通性に気づくセンスも必要とされます。このため、記事によってはスクープ並みに評価されることもあります。

  新聞社や記者にとってまとめモノが重要なもう一つの理由は、紙面を埋めるのに都合がいいという点にあります。これは、まとめモノが長い記事にしやすいということと、「腐らないネタ」であることが理由です。Twitterでシェア

 

大きなニュースのない日には…

  大ニュースはそうそういつも起きるものではありません。しかし政治面、経済面、社会面といったそれぞれのページには、毎日「トップ記事」が必要です。新聞は、どの面も必ず「トップ」と「サイド」があり、残りを「段モノ」「ベタ」などが埋めるという構成になっているからです。

  そこで、大きなニュースがない日には、まとめモノをトップに据えることになります。まとめモノであれば、事前に準備しておくこともできます。発生モノのニュースはすぐ載せなければなりませんし、特ダネも先延ばしすると他紙に追いつかれてしまいます。しかし、まとめモノであれば、事件や特ダネがない日のために温存しておけるのです。

  というわけで、ニュースがない日の翌日には、たいていトップにまとめモノが載ることになります。実際、月曜日の朝刊の1面を見ると、かなりの確率で「まとめモノ」になっています。Twitterでシェア

 

このように、記者にとって「記事の価値」は異なります。あえて順位づけをすれば、

調査報道 > 特ダネ > 特ダネではないが独自モノ > 傾向・まとめモノ > 共通・発表モノ

 といった感じです。当然、記事の大きさ(扱い)も基本的にはこれに比例します。ただし、すでに述べたように「傾向・まとめモノ」でも目のつけどころが良ければ、並みの独自モノよりは価値が高くなります。

 記者も新聞社という企業で働く組織人ですから、「なるべく価値の高い記事を書いて自分の評価を上げたい」と考えながら仕事をしています。ニュースがない日に工夫のあとが見られる記事を発見したり、取材に手間がかかる調査報道を目にしたりしたら、裏にある人間ドラマを想像すると、記事の見方が違ってくるかもしれません。