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正しい新聞の読み方

第3回 魚の鮮度は「眼」でわかる。新聞は?

2015年1月10日

 20160108_正しい新聞の読み方_3

何はともあれ、まずは実際に新聞を手にとって観察してみましょう。ここでは全国紙の朝刊について説明しますが、夕刊や地方紙でも基本的な構造はほとんど同じです。 

「1面」を読む

 まず、上部や右上にある「◯◯新聞」という題字が目に入ります。この題字があるのが新聞の1面で、ページ数でいうと1ページです。実際、左上の欄外に「1」と数字で示されています。ページをめくって、次の面以降に2、3、4……と続いていることを確認してください。 

 ページ数の右には、「版」という表記があるはずです。ほとんどの人は気にしたことがないと思いますが、実はこの数字が、新聞を読む際には非常に重要なのです。

 というのも、新聞の「鮮度」はここを見ると分かるからです。魚の鮮度を「眼」を見て判断するように、ニュースのプロは必ず新聞を読む前に1面の「版」を確認します。Twitterでシェア

 (*鳥の足跡マークをクリックすると、下線部の要旨がツイッターでつぶやけます)

  ここに14版と書かれていれば、その新聞が「最終版」であることを表しています。分かりやすく言うと一番新しいバージョンである、という意味です。Twitterでシェア記事の鮮度が高いわけですから、新聞として最も価値が高いといっていいでしょう。逆に、「13版」や「12版」と書かれている場合は、一番新しいバージョンではないわけです。

  実は、全国紙の朝刊には11版から14版まで4つのバージョンがあります。11版は発行部数がわずかですし、廃止した新聞社もあるので、実質的には12〜14版の3種類といってもいいかもしれません。同様に、夕刊は1〜4版に分かれています。

 なお、産経新聞の朝刊は15版が最終版、夕刊も5版まであります。ただし、首都圏など東日本では夕刊自体を発行していません。 

 「版」は、日本の新聞が全国展開を始めた百年以上も前に生まれた仕組みです。 

 配達するエリアが広がっていくと、印刷工場から離れた地域に届ける時間は遅くなってしまいます。かといって「朝刊」がお昼や、読者が出勤した後で届いたのでは意味がありません。そこで、印刷工場から離れた地域に配る新聞は別版とし、早めに刷り始めることにしたのです。

  11版や12版は「早版」と呼ばれますが、当然、記事の締め切り時間も早くなります。社によって異なりますが、記者はだいたい午後7時から9時くらいまでには早版用の原稿をデスクに提出しなければなりません。

  言い換えると、それ以降に起きた事件や、分かったことを早版に掲載するのは難しくなります。運悪く早版が配られる地域に住んでいる人は、深夜に起きた事件などについての記事は読めないわけです。Twitterでシェア

 これに対し、最終版の原稿の締め切りは午前0時から1時ごろまでです。朝刊に印刷される日付の前日に起きた事件は、ほぼカバーできると言えるでしょう。

  最終版とそれより前の版には、もう一つ大きな違いがあります。実は、いわゆる「特ダネ」が入っているのは最終版だけなのです。Twitterでシェア

「特ダネ」とは

  特ダネとは、他紙には載っていない独自の大ニュースのことで、「特報」「スクープ」とも呼ばれます。他紙では読めない記事ですかすから、これが入っているかどうかは、その新聞の価値を大きく左右します。ところが、最終版が届かない地域の読者は、こうした記事を少なくとも紙面では読むことができないのです。

  これは、13版までにスクープを載せてしまうと、他紙に追いつかれる恐れが生じるからです。つまり、ライバル紙の記者が早く刷られた版を目にして取材を開始し、最終版に同じ内容の記事を載せることでスクープではなくなってしまうリスクがあるのです。

  では、最終版が配られない地域に住む人はどうすればいいのでしょう。もちろん、みんながみんなスクープを必要としているわけではありません。仮に朝刊で読めなくても、少なくとも半日もすればネットや夕刊で読めるわけで、それで十分という人もいるでしょう。

  どうしても朝一番で最終版を読みたいという人には、最近ではスマホやタブレット端末で読める電子新聞という選択肢があります。電子新聞は物理的に運ぶ手間がかからないので、必ず最終版を配信するからです。

  話を紙面に戻しましょう。1面はいわば新聞の「顔」で、ここにどんな記事をどのように載せるのかに、その新聞社の個性や哲学がはっきりと表れます。

 まず、トップ記事が何かを見てください。トップ記事というのはページの右上にある、最も大きい記事のことです。見出しの文字も、他の記事より一回り大きくなっているはずです。

  1面のトップ記事は、新聞社がその日(厳密にはその前日か当日未明)に一番重要だと位置付けたニュースです。記者にとっても、この1面トップ記事を書くことは大きな名誉です。実際、ここに頻繁に記事を書ける人は「優秀な記者」とみなされます。

  大事件が起きた日であれば、どのニュースをトップに据えるか迷う必要はありません。特ダネが入ってきた日も同じです。しかし、そんなに毎日大ニュースや特ダネがあるわけではないので、何をトップに選ぶかはしばしば社内で論争になります。

  例えば、政治部の人たちが「今日、国会で可決された法案は重要だからトップにすべきだ」と主張すれば、経済部の人たちが「この企業買収の記事はうちが独自に取材してつかんだ特ダネだからこっちだ」と言うかもしれません。

 最終的な決定権限を持っているのは編集局長と呼ばれる幹部ですが、いずれにせよ、どの記事のニュースバリューが高いかを社内で議論して決めるわけです。

  こうした議論を経て決まる1面のトップ記事は、新聞社の性格を色濃く反映することになります。Twitterでシェア「新聞はみんな同じ」という声をよく聞きますが、大ニュースがない日に1面のトップ記事を読み比べれば、「意外と違うな」という印象を受けるのではないでしょうか。これは記事の選択基準、言い換えると価値観が新聞社によって異なるからです。

  逆に、各社が1面で報じるような大ニュースがあった日の紙面も見ものです。各社が記事をトップに置くかどうかや、見出しの大きさ、本文での書きぶりなどに注目すると、重要性の判断や政治的なスタンス、持っている情報量などがどう違うかがわかるでしょう。

  1面の表記と、ニュース記事についてざっくり見てきましたが、これだけでも「記事に書かれていること」以外に、様々な情報が読み取れることがわかっていただけたのではないでしょうか。