[ 連載 ]

正しい新聞の読み方

第2回 ネットユーザーこそ「紙の新聞」を読もう

2016年1月1日

「新聞の読み方」第2回目バナー

 新聞は若い人には馴染みが薄いメディアですし、どちらかといえば「古臭くて、これから消えていくもの」というイメージが強いでしょう。「ニュースなんてテレビとネットで見れば十分」と考えている人も少なくないはずです。

  私自身も、ここ数年はパソコンやスマートフォンでニュースを読む機会が増えました。確かに速報性という意味では紙の新聞より圧倒的に上ですし、利便性も年々高まっていると感じます。おそらく、紙からネットへのシフトは今後も加速していくでしょう。

  ただ、ネットで情報をがんがん集めて分析し、ビジネスなどに活用したいという人にこそ、まず一定期間、「紙の新聞」を読むことをお勧めしたいと思います。Twitterでシェア

 (*鳥の足跡マークをクリックすると、ツイッターで下線部の内容をつぶやけます)

  私は「ネットより紙の方が優れている」というつもりは全くありません。私が強調したいのは「ネット情報を本気で活用したいなら、まず紙の新聞を読みこなす力を付けた方がいい」ということです。

 メディアリテラシーや情報分析の基本を身につける「教材」として、紙の新聞に勝るものはないと思うからです。

  「ゲームのルール」から見えるもの

  第一の理由は、新聞業界が一定のルールや、ある種の文化を共有した上で「報道の速さ」や「正確さ」を競っているからです。

 記事の書き方、紙面のデザイン、スクープ競争の勝ち負けの決め方などには、業界で共有されている暗黙の了解があります。こうした「ゲームのルール」が共有されているということは、異なる新聞同士で比較しやすいということを意味します。Twitterでシェア

  そうしたルールや文化、つまり「正しく読む手順」を知っていれば、記事を読んだときに、それが自信を持って書かれているかどうかや、情報源が何かなどがだいたいわかります。あるニュースについて各社が異なる解釈を示したとき、時間が経ってから、どれが結果として正しかったのかを検証することも容易でしょう。

  こうした点に注目しながらニュースを読むことは、情報分析の基本中の基本です。新聞はブログや新興メディアに比べて取材手法や文章表現などが標準化、統一化されているので、共通の法則を知ってしまえば、新聞同士を同じモノサシで比べることができます。

 情報のカオスともいうべきネット情報の世界に立ち向かうなら、まずは新聞情報の分析という「基本問題」が十分に解けるようになってからでないと、歯が立たないでしょう。

 ネットが紙にかなわないこと

  もう一つ、新聞にはネットメディアとの決定的な違いがあります。それは歴史の古さです。

  論争的なテーマや大事件は、その社会的影響が大きければ大きいほど、検証には長い時間がかかります。最近の従軍慰安婦をめぐる「誤報」事件はその最たるものでしょう。ある報道や、誰かが示した予測が正しかったのか、間違っていたのかは、ある程度時間がたたなければ見えないことがあるのです。

  そうした検証や比較を経験してこそ、報道を適切に評価する視点や姿勢を身につけることができます。そして、一般の人でもそうした長期の検証が可能なメディアは、現時点では新聞くらいなのです。Twitterでシェア 

  例えば、新聞が過去に何をどう報じていたかは、図書館に行けば、20〜30年まで遡って、だれでも調べることができます。最近は新聞社が提供する記事の有料データベースで、キーワード検索なども可能です。つまり、数十年という長い時間軸のもとで記事の検証や比較が可能なのです。

 ビジネスパーソンの「価値観」を知るツール

  最後の理由は、新聞というメディアが、政治家や官僚、ビジネスパーソンなど、政治や経済の大きな流れを左右する人たちと、「ニュースの選択」において価値観をかなり共有しているTwitterでシェアからです。

  ネットから情報を得てビジネスなどに活かす場合でも、まずはこうした社会のキーパーソンがどんな価値観の持ち主か、今何に注目しているかを理解する必要があるでしょう。

 確かにネットを探すと、新聞には載っていない「政局の裏側」といったディープな情報がたくさん転がっています。しかし、そもそも政局の大きな流れや、登場するプレーヤーの行動原理を理解していなければ、その情報を真贋も含めて評価するのは不可能です。こうした基本情報を得るのに、紙の新聞は格好の情報源なのです。

  次回以降に詳しく説明しますが、紙の新聞の場合、あるニュースが掲載される面やその位置、見出しの大きさなどを見ることで「その新聞社にとってのニュースの優先順位」がはっきりわかります。

 例えば政治家や官僚、教師の読者が多い朝日新聞で大きく取り上げられるニュースは、そうした層が関心を持っていることを意味します。ビジネスパーソンがよく読む日経新聞のニュースの価値付けを見れば、企業人の世の中の見方がわかってきます。産経新聞なら保守層の考え方を理解する助けになるでしょう。

  一方、ネットはどうでしょう。是非一度、同じ日の新聞紙面、新聞社のサイト、ヤフーニュースなどのキュレーションサイトを同時に見比べてください。ネットは新聞に比べ、「たくさんクリックが稼げそうなニュース」が目立つ位置を占めていることに気づくでしょう。具体的には芸能、スポーツ、ネット関連のニュースが圧倒的に多いはずです。

  もちろん社会問題や政治経済のニュースも出ています。しかし、ほとんどの場合、報じられるのは「法改正が決まった」「新しい制度が導入される」といった、大きな節目だけです。

  この点、新聞はそうした政策の構想が浮上し、それを巡って様々な集団の駆け引きが起き、利害調整を経て決まるまでの長い過程を報じます。ネットに流してもクリックは稼げそうにありませんが、社会のキーパーソンは強い関心を持っているからです。

  よく、大きな制度変更があったときに、「そんなの知らなかった」「マスコミはこれまで報じてなかったじゃないか」という声を聞きます。しかし、その多くは新聞紙面では半年、1年前の構想段階から報じられている内容です。テレビやネットを見ていてもわからないだけで、新聞を読めば、けっこう細かい経過が載っているものなのです。

 就活生が新聞を勧められるわけ

  就職活動を始めるとき、親や先生、社会人の先輩から、「そろそろ新聞を読んだ方がいいよ」と言われることがあるかもしれません。その理由の一つも、人事担当者や役員といった、会社の主要ポストにいるビジネスパーソンの価値観や関心事を手っ取り早く知るのに、新聞というメディアが適しているからです。Twitterでシェア

  こうした人たちは、自宅で購読しているかどうかはともかく、職場では必ず紙の新聞を読んでいます。ですから面接の際も、新聞に出ている「最近の大学生のイメージ」を念頭に置いて臨む方がいいでしょう。Twitterでシェア新聞が、「最近の若者は無気力で根気がない」というイメージを振りまいているなら、それが正しかろうが間違っていようが、相手に自分はそうではないことを印象付ける必要があるわけです。

  採用担当者が共有している、「これからはこんな人材が必要だ」というイメージも、彼・彼女らが読んでいる新聞を観察すると見えてきます。ですから、OB・OG訪問をする人は、先輩に職場でどんな新聞が読まれているか聞いておくといいでしょう。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉がありますが、就活でも相手がどんな考えや戦略を持っているのかを知ることは、成功をつかむための前提条件です。

  さらに、新聞にはビジネスの場において「共通の話題の供給源」という機能も担っています。Twitterでシェア

  ほとんどの大学生にとって就活は、「自分という商品を売り込む」という意味では初めての本格的なビジネス交渉(営業活動)です。その際にカギになるのは、いうまでもなくコミュニケーションです。面接はもちろん、ちょっとした雑談の際の話題の選び方や、相手に「こいつは仲間になれそうだ」と認識してもらえるような価値観の提示は成否を分けるポイントになります。

  みなさんも、誰かと親密になるには、顔を合わせた時の何気ない会話が重要だということはよく知っているはずです。「昨夜のテレビドラマ、面白かったね」といった話題は、その典型です。この場合、テレビというメディアが話題提供の役割を担っているわけです。

  同様に、相手が30〜40代のビジネスパーソンの場合は、新聞で話題になっているテーマを振るのが一番無難です。仕事の必要性から多くの人が新聞を読んでいるので、そこで取り上げられたニュースや、名物コラム、連載小説などは共通の話題にしやすいのです。これはビジネスパーソンがゴルフを始める理由にも通じます。そもそも、ビジネスパーソンが新聞を読む理由も、そうした「仲間内や取引先との話題作り」という側面が大きいのです。